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- インタビュー
『プロジェクトレイヤード』キャラクターデザイン担当のredjuiceさんにインタビュー!
『プロジェクトレイヤード』のキャラクターデザイン監修を務める、イラストレーターのredjuiceさん。これまで『プロジェクトレイヤード』に関わってきたなかで感じた作品への印象や、キャラクターをデザインする際のこだわりなどを伺いました。インタビューの場には総合プロデューサーの手塚晃司も同席。製作中のちょっとした裏話なども教えてもらっています。
【本文】
- redjuiceさんから見た『プロジェクトレイヤード』の魅力
—— 初めて手塚総合プロデューサーから『Project LayereD(プロジェクト・レイヤード)』の話を聞いたとき、作品に対してどんなイメージを持ちましたか?
redjuice:ソーシャルゲームということ、あとはユーザーの方からデザインを募集するということで、今までやっていた仕事とは全然違う印象はありました。ただ、自分のなかでは「アートディレクター」というよりも「いちイラストレーターとして参加する」というイメージを持っていたので、実際に始まってみないとどうなるか分からなくてドキドキしていました。
—— プロジェクトの形が見えてからの印象はいかがでしたか?
redjuice:新しい試みをたくさん行っているプロジェクトですから、作品情報が公開されたタイミングでは、皆さんから見るとインパクトや驚きがあったと思います。ただ、僕は裏方として動いていたので、内部からだと様々なプロジェクトが徐々に積み重なっていっていることがわかっていて、発表後印象が変わるようなことはなかったです。その代わり、発表したらユーザーさんがどんな反応をしてくれるのかは、とても気になっていました。
—— 新発表続きで、たくさんの感想を目にする機会があったと思いますがいかがでしたか?
redjuice:Twitterなどで情報を追いかけていると、感想をつぶやいている方を見かけることはありましたね。
手塚:アニメの情報を出す前までは、映像がないと語れることも少なくて情報を控えていた向きもあったので、今後の動きには期待してほしいですね。
—— ゲーム画面やアニメ映像を見た際の感想はいかがでしょうか。
redjuice:アニメは基本的にフルCGでフル3Dなので、キャラクターの造形にこだわっていて、特に表情が豊かだと感じます。あとはアクションシーンですね。ゲームさながらといいますか、実際にゲームで使っているデータをアニメでも使っているところが驚きです。ゲーム画面がそのままパッと出てくるような感じで、すごくライブ感があります!
—— アニメーションに勢いを感じますね。『レイゼロ』ならではと感じるのも、そういったポイントでしょうか。
redjuice:はい。ゲームとアニメの世界がシームレスでつながっていて、さらにユーザー参加型で作っている。そんなプロジェクトで大きな成功を収めたものは、僕の知る限りではこれまでないものです。わくわくしますね。
- キャラクターデザインについて
—— 世界観や作品のコンセプトは、全体のデザインにどのような影響を与えていますか。
redjuice:『レイゼロ』のビジュアルに関しては、僕が“作ったもの”はほとんどないと思っています。キャラクターを描いたり、構成を考えたりといったことはしていますが、背景のモデリングはCGチームが作っていますし、メインのキャラクターは、やまかわさんとわたあめさんの2人が作っていますからね。僕はデザインというよりキービジュアルを描いただけ……という感じですね。
手塚:redjuiceさんの目線としては、ほかのイラストレーターさんと同じ立場なんですよ。「『プロジェクトレイヤード』の世界に対して、僕はこういうアプローチをします」というスタンスで描いてもらっているイメージでしょうか。
redjuice:ユーザー参加型と聞いたとき、もっと初心者っぽい方ばかりが参加するのかなと考えていました。まさか、わたあめさんや、やまかわさんレベルの方々がいるとは思っていなかったし、それも1人や2人ではなく何十人もいて……。
手塚:それもあって応募作品を選ぶのは苦労しましたよね。どれかに絞ることが難しくて。
redjuice:本当に大変でしたね、選考は。
—— 最終審査まで残ったものはどれもクオリティが高かったですね。
redjuice:そうなんですよ。作品を選んでからも、応募していただいた方のイメージを崩さないように、気をつけて描いていきました。
—— やりづらく感じた点や、逆に面白いと感じた点はありましたか?
redjuice:どんな仕事にも面白いこと、やりづらいことはあると思いますが、レイアウト面でほかの人のキャラクターをこねくり回すところは、後ろめたさというか……申し訳ない気持ちがありました。そして、人のデザインしたキャラクターは自分と線が違うので、ちょっと扱いづらかったですね。ただ、necoさん(※シンジやジョシュア等のキャラクターデザインを担当されたイラストレーター)は若い感性を持っているし、僕の絵を見てくれている人でもあったので、割と近い印象でした。それもあって、キービジュアルは描きやすかったです。
手塚:そういえば、necoさんは(ユウトのACTの)ハバキリを見たとき、「僕もロボを描きたい」と言ってましたよ。
redjuice:ハバキリを見てロボを描きたいって相当だと思いますよ(笑)。necoさんは絶対ライバル心を燃やしてくると思うので、僕も対抗して頑張ったりしてね。
—— 刺激しあっているんですね。
redjuice:そうしてハードルが上がって、仕事が大変になっていく(笑)。いいことですけどね。
—— アニメの主人公ユウトと、ゲームのヒロイン、イオンのキャラクターデザイン原案はどのように掘り下げていったのでしょうか。まずは、わたあめさんのユウトについてお願いします。
redjuice:パッと見たときに、これは女性の描いた男の子だ、という気がしました。女性の描く男女と、男性の描く男女は、根本的なところで違うのです。なので、ユウトのイラストであれば、わたあめさんが描いてくれた“イマドキの若者”に、おっさん臭さを入れちゃダメだな、と感じたことを覚えています。できるだけエッセンスを読み解きながら、元のデザインに忠実に描くことを意識しました。
手塚:redjuiceさんならしない表現なんかはありましたか? 自分にはなかった発想というか。
redjuice:うーん……。
手塚:アホ毛とか?
redjuice:アホ毛は一般的な記号ですからよく描きますよ(笑)。僕はゴテゴテした装飾を付けるタイプではないので、わたあめさんのイラストもシンプルにまとまっているという点では分かりやすかったです。ただ、服の着こなし方や仕草など、細かいところにわたあめさんらしさが出ていました。見ていて一番苦労するなと思ったのは、ズボンの腰の部分、ちょっと股を開けているところですね。あとはパーカーの後ろ側の空間も、ピタッとくっついていなくて、空間のゆるさみたいなものがあります。
—— たしかに。服の素材感にも、野暮ったい感じはありませんね。
redjuice:そう。素材の厚みは感じられるのですが、あえて身体のラインにピタッとくっつけていないのかな。身体のラインよりも、ファションとしてのラインを重要視しているところにセンスがあるな、と。「redjuice風に落とし込む」よりも、「この絵をredjuiceが描くとどうなるか」というところで、僕としてはわたあめさんの絵から勉強しながら描いていった感じです。
—— パーカーや表情の設定についてわたあめさんの記述がある部分もありましたが、ほかの部分はいかがでしょうか。
redjuice:基本的にはそのままです。デザインのときに手を加えたのは、鼻の頭の影ですね。今までのredjuice的な描き方だと鼻の頭が光っていて、周りがちょっと暗い色でしたが、最近はそれも少し古くなったかなと。全体的なイメージを若返らせる意味でも、鼻の頭を逆に黒くして、最近の描き方にしています。何が違うのかって言われると、分からないかもしれないですけど(笑)。
手塚:立ち絵のデザインも確認していただきましたが、気をつかって調整していただいていますよね。ユウトは主人公なのにやる気がないタイプなので、アニメで描いていてもすごく難しいんです。
redjuice:やる気のないキャラクターって難しいんですか?
手塚:喋らないし、暗い顔ばっかりだしで、大変ですね(笑)。でもそのぶん、意識が強くなったときは映えるんです。目力を感じさせるというか。
redjuice:ゲームの主人公だと、無口なキャラクターは感情移入しやすいと思いますが、アニメの主人公となると難しいですよね。……改めて、ユウトって本当に主人公なんですよね? 存在感がなさすぎて心配になる(笑)。
手塚:大丈夫、主人公です(笑)。redjuiceさんに仕上げていただいて、目の演技がすごくよくなりましたよ。
redjuice:絵で描くと、いかようにも崩せるので簡単なんですよ。3Dで作ると難しくて、場合によっては別パーツにしたいキャラクターも出てきたりして。
手塚:実際に別でイラストを用意していただいて差し替えるなどもしていましたね。
—— やまかわさんが描かれたイオンについてはいかがでしょうか。
redjuice:やまかわさんの絵は僕と近いところがあまりないので、忠実にというよりは、redjuice風にかなり落とし込んだ気がします。どこがと言われると、具体例を出すのが難しいですが……。デザインについてはユウトと同じように、できるだけ元のデザインに忠実に、という意識で進めました。あとは目の形とか、そのままだと別世界のキャラクターになってしまうところは、統一感を持たせるために調整しています。お互いのイメージを寄せていきつつ、redjuice的な描き方にした感じです。あとはこの、スカートの後ろ部分が……。
—— 左右非対称で、アシンメトリーになっているところですね。
redjuice:実はこれがすごく謎でした。スカートの裏側に出ているのが、ドレスなのか別のものなのか悩んで……。ここについて(やまかわさんって)何かおっしゃっていました?
手塚:いえ、特にありませんでしたよ。
redjuice:そうですか、よかった。今後僕が描くこともあるかもしれないですけど、僕はたぶん何も考えないで描くと思うので。
一同:(笑)。
—— デザインにおいて、やまかわさんらしいエッセンスが感じられたところは?
redjuice:非常に記号的な感じがしますよね。ピンク色の髪といった特徴はありますが、イオン本体はあまり主張していない気がしました。その代わり、ジッパーとか、大きなブーツとか、身につけているもので主張している印象でした。そして色のバランスですね。ピンクの髪に対して蛍光グリーンはすごくいい組み合わせだと思います。
—— 完成イラストですと、ジッパー部分が線画段階から変わっている気がするのですが、ここだけ描き直されたりしたのでしょうか?
redjuice:これは3Dで作っているので、途中で数を変えたりしています。ちょっとジッパーの数が多いバーションもありますよ。
一同:おおー!
手塚:ここをCGでやられているんですね。
redjuice:これを手書きでやるのは……かなり骨が折れますからね。
手塚:このジッパーって、上げていくとどこで終わるのか分からないですよね。終わりがないな〜と見ていて思ってたんです(笑)。
redjuice:頭の上まで閉めても終わりがない構造です(笑)。このジッパーはアクセサリーの意味合いなので、本当は構造として整合がなくていいのですが、ちゃんと閉められるように整合性だけ持たせています。
—— オーディション応募作品を見ると、三面図を描いている方もいれば、キービジュアルのように1枚絵だけイラストを描く方もいました。キャラクターデザインをするときや、こういったデザイン応募をする際に、「ここは描いておかなければならない」というような点はありますか?
redjuice:僕自身は、キャラクターデザインというものは基本的に自由だと思っています。ゲームを作る現場であれば、当然フォーマットがあるし、アニメーションのキャラクターデザインとなると描かなくてはいけないところは必ずあると思います。でも、デザインを見たうえでアニメーターの方が機転を利かせてくれたりするし、そもそも担当するデザイナーさんによっても描き方も異なってきます。なので、「三面図を描かなければ」とか「バックスタイルも描かなきゃ」といったフォーマットを意識するよりも、伝えたいところがしっかり伝わるように描くことを意識すれば良いのではないでしょうか。
—— 形式にこだわりすぎないように、ということですね。
redjuice:そうです。例えば、俗に「Tボーン」と呼ばれるイラストがあります。手を広げて立っているイラストで、設定資料集などによく載っているものですね。これはデザインとしてはすごく分かりやすいですが、描いているときはあまり面白くはないですね。ただ、Tボーンまでは必要ないけど、ちょっとでもキャラクターの雰囲気が出るようなポーズを付けてデザインするのは大事だと思うんですよ。僕が描いたとき、ユウトの絵は既にデザインが決まっていたので、あとは伝えるだけということもあって特徴的なポーズはとらせていないんですが。
手塚:普通、アニメ作品なんかだとキャラクターの立ち絵にはポーズを付けないパターンも多いですよね。でも、それだとredjuiceさんの良さが出ないだろうと思い、キービジュアルをお願いしたときは、自由に(キャラクターを)動かしてくださいと言いました。結果、ユウトは横向きだったり、イオンもユウトも動きが激しかったりしていて、普通のキービジュアルとはまったく違う。すごく惹きつけられるビジュアルになっていると思います。
redjuice:作品性を伝えるという意味でも、ついつい全部入りで作ってしまうんです。ただ、僕自身もキービジュアルはもっと自由でいいと思っています。
—— このプロジェクトは今後IPとして公開するという方針があるため、作り手の視点で見る方も多いのではないかと思います。このIPをフリーで公開するという設定は、最初からあったのでしょうか?
redjuice:はい、大前提としてお話しいただきました。なので普段の仕事とは流れが違うといった覚悟もあったのですが、どう進めるかなどは実際にやってみないと分からないですし、正直不安が大きかったです(笑)。人のデザインをいじるのは大変だろうし、実際にやってみても大変でしたが、思えばゲームのデザイナーさんも日々そういう仕事をされているんですよね。
redjuice:原作があって、キャラクターデザイナーさんが描いたキャラクターを3D用のデザインに起こして、3Dにモデリングして……ということですね。
redjuice:現場ごとにアーティスト精神を持った人がいるわけですよね。
—— イオンの後ろ姿のように、見えない部分を想像して起こすということですね。今後はユーザーのみなさんが『プロジェクトレイヤード』のキャラクターを動かしたり使ったりすることも出てくるわけですが、何か製作のアドバイスをいただけますか。
redjuice:センスは千差万別なので、好きに使っていただけば、と(笑)。キャラクターデザインとは、自分自身が「何が好きか」「何が嫌いか」が最大限出てくるものだと思います。アプリケーションの使い方は本を読めば覚えられるけど、そういうところではなく、ゲームや映画など、自分が好きなものから何をエッセンスとして持ち込むか、なんじゃないかな。僕はもともと機械工学科で学んでいたので、デザインするときはメカニカルな部分や構造を考えていますが、そのうえで「ゲームだったらここはいいや」というように敢えて無視したりもします(笑)。
—— 『レイゼロ』では、人間のパートナーとしていろんな形で出てくる「Act(アクト)」がいます。この設定を聞いた際の印象はいかがですか?
redjuice:AR(拡張現実)ですよね。実際に訪れるであろう未来として身近になってきましたし、話題性もある。デザイナー目線で、今後どうなっていくのか考えながらデザインできるのは面白そうだと感じました。そうしたテーマをデザインに取り込んだり、逆にこちらで考えたものを作品の世界に持ち込んだりと、応用が利きやすく、時代にもマッチしている気がします。
- 仕事に対するredjuiceさんの意識
—— 『レイゼロ』に限らず、redjuiceさん自身についてもお伺いします。イラスト製作で一番楽しいと感じる工程はどこでしょうか?
redjuice:全部楽しいとも、全部辛いとも言えますね。例えばラフを練っているときはすごく楽しいですが、なかなかいいデザインがでないと「今日はもうダメだ。寝よう」って丸一日寝込むこともあります。体調が悪いのではなく、デザインが出ないことに対して自分が嫌になってしまって。
手塚:描いていると降りてくるというわけではないんですか?
redjuice:降りてくるときもありますね。今回のノアは10パターン描いて、最後に出てきたデザインで本決定しました。このときはまさに「降りてきた!」という感じで。デザイン中に気持ちを切り替えたりしているわけではないのですが、突然出てくることがあって、そういうときはやっぱりテンションが上がります。でも、この例でいうと楽しい部分は10%なんですよ。この10%が出るまでは苦しむわけです。
手塚:ちなみにノアですが、イベントでコスプレイヤーのえなこさんに衣装を着て頂きました。
redjuice:衣装後ろの部分、すごくアキが大きいですが大丈夫ですか?
手塚:それがいいんじゃないですかね?
—— ほかの工程ではいかがですか?
redjuice:パーツを分けて色を塗る工程は、普通にやっていると面白い作業ではないのですが、頭を使わなくていいタイミングでもあるので音楽を聴きながらやっています。いかに効率よく進めるかより、演奏しているような気分ですね。1つのキャラクターで線画2時間、パーツ分けで1時間ぐらいと考えていますが、その1時間でリズムができる感じです。色塗りはキャラクターによってまちまちなので、新しいことに挑戦するときは資料をあさったりもしますが、比較的、色塗りの工程は楽しくやっていることが多いです。
—— デザインで行き詰まったときなど、気分転換でおすすめの方法がありましたら。
redjuice:気分転換の方法は人それぞれだと思いますが、好きなことをやることですね。僕の場合は基本的に外に出たくないので(笑)、とにかく寝ます。
—— 仕事中に必須のアイテムがありましたら教えてください。
redjuice:片手で操作できるデバイスとかコントローラ、あとはこの「Wacom MobileStudio Pro(モバイルスタジオ)」です。『レイゼロ』のイラストは、ほぼこれで作業しています。普通の液晶タブレットってドットが見えるんですが、これは解像度が4Kで絶対にドットが見えないんです。なので拡大しすぎることもないし、見えている状態のまま描けばいいので心地よく描けます。
—— 実際の見え方と同じ状況で作業ができるんですね。
redjuice:そうなんです。去年出たばかりですが、ここ1年で革命が起きたのではと思えるぐらいです。ただ、使っている人は少ないのかな。いいデバイスなんですが、まだニッチみたいです。
—— ありがとうございました。最後に、『レイゼロ』を楽しんでいる方、楽しみにしている方に向けてメッセージをお願いします。
redjuice:前例のない、ユーザー参加型の一大コンテンツということで、できるだけ多くの方に参加していただきたいです。そして参加だけでなく、Twitterなどでたくさんの方を巻き込んで、コンテンツをどんどん大きく、楽しいものにしていきましょう! ぜひ、よろしくお願いします!